はじめに


地球を測る。

地底人を探してみよう

 もしもの話である。私たちが暮らすこの地球の中にもしかしたら地底人が住んでいるらしい?!としたらどうしよう? 地底人と友だちになるなんて素敵だね。ただし、地底人は地下深くで暮らしていて、決して地表には現れない。さて、どうやって地底人を探せばよいだろう?

 私はよく、大学1年生の学生にこれに似た様な質問する。すると、ほとんど全ての学生が「穴を掘ってみる」と答える。なるほど。その通り、決してそれは間違ってはいない。しかし闇雲に穴を掘ってみても、地底人に会える確率はとても低いだろう。そもそも、穴の深さに限りがある。人類が掘った穴の中で、一番深い穴は旧ソビエトがコラ半島にあり、深さは12,262m(※1)=約12kmだが、一方で地球の直径は12,700kmほど。どうやら穴を掘るだけではダメそうだ。


はろー!僕、地底人のチティー!

 おそらく地底人はいないと思うが(※2)、調査対象を地底人から次のものに置き換えても上の話は成り立つだろう。いずれも穴を掘れないほど深いか、穴を掘る前に事前調査が必要である。ではどのようにして、このような地下深くのターゲットを調査すれば良いのだろう?
  • 地下水を含む地層
  • 内陸活断層やプレート境界断層
  • 石油・天然ガス・金属などの資源
  • 火山の下のマグマ
  • マントル
※1)近年、最深記録が破られたようだ。どうやらサハリンでの掘削孔が最深で、深さは
   12,345mだそうな。覚えやすい数字ですね。
※2) 地底人の話についてはこちらの子供向けページもご覧頂きたい。


物理探査とは?

 ヒントは病院にある。たとえば体調がすぐれず、病院に行ったとする。そこで医者はどうするか?「じゃあ手術しよう!」といって、いきなり頭やお腹を切り開いて原因を探そうとするだろうか?、、、するはずはない。まずは体温や血圧を測ったり、聴診器で心臓や肺の音を聞いたり、心電図を撮ったり、レントゲン撮影をするだろう。体を切り開かずに間接的に「見る」ことで、体の内部の様子を「診る」わけだ。


箱の中身は何でしょね?でも壊しちゃダメよ。

 地面の中も同じである。地面を掘ることが難しいのであれば、音や電気・電波などを使って、地下を掘らずに探査すればよい。このような探査技術は「物理探査」と呼ばれている(※)。物理探査では、人工的に発生させた物理現象や自然の物理現象を測定して、物理の法則などを用いて測定データを解析することによって、地下の様子をイメージ化する(下図)。


壊さなくても、箱の中身は調べられる。

※物理探査の研究を行う学問は、工学的には「物理探査学」と呼ばれているが、理学的には
 「地球物理学」と呼ばれている。ただ英語ではどちらもGeophysicsである。


なぜ海底で電気や磁気を測るのか?

 御存知の通り、地球表面の7割は海に覆われている。地球の中の様子を知るためには、海底での物理探査(地球物理学的な観測)が必要なのだ。海底では、地震観測が行われており、地中温度の観測も行われている。電気や磁気も測定することによって、地球の内部の様子を詳しく知ることができ、防災・減災のための調査や海底資源開発、地球環境問題への理解、地球進化そのものの解明などが進むと期待される。


 このように海底で電気や磁気を測定し、地球を理解しようとする学問を「海底電磁気学」という。陸地や衛星軌道上など、地球全体で測定する場合は「地球電磁気学」である。電気や磁気の測地は、人間の健康診断時には大活躍で、例えば心電図に脳波、体脂肪率・レントゲン・MRIなどなど… おなじく地球を「診る」のにも役立つはずである。では、どのようにして地球を「診る」のであろうか?

 以後のページでは、海底電磁気観測やその理論などを通じて、どうやって地下を調べているのか?地下の様子はどうなっているのか?について、その一部分であるがご紹介しよう。詳細については、入門書1,2のほうもぜひご参照頂きたい。


参考資料

  1. 太陽地球系科学, 地球電磁気・地球惑星圏学会 学校教育ワーキング・グループ編, 京都大学学術出版会, 306pp., 2010.
  2. 後藤忠徳, 地底・海底の科学(仮), 執筆中, 2012.