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研究内容


地震発生帯・活断層周辺の地下構造

地殻内の流体(水などの液体)の存在は、地震の発生に大きな影響を与えます。しかし地震発生帯周辺の流体分布については地震学的な調査だけではよく分かりません。

岩石の電気伝導度は流体の有無に対して敏感に変化します。ですので、地震発生帯やその周辺の地殻の電気伝導度構造を知ることができれば、地震活動と地殻内流体の関係を議論することができます。我々は海溝型巨大地震発生域周辺の地殻内流体の分布を明らかにするために、海溝付近で地震波探査と並行して海底電磁気観測を実施し、海底下の地殻電気伝導度構造を調査をおこなっています。電磁気観測と地震観測の結果の双方を組み合わせることによって、従来より詳細に地殻内流体の分布のイメージができることが期待されています。

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沈み込み帯での電気伝導度構造調査の模式図。


新たな海底電磁探査法の開発

海底下の活断層内の流体分布を詳細に調べる手法として、海底に電流源(コントロールソース)をおき、人工的に発生した電磁波を用いて地下の電気伝導度分布を詳細に調べる方法が提案されています。また石油やメタンハイドレートは周辺の堆積層よりも電気伝導度が低いため、コントロールソースを用いてこれら地下資源の分布量を従来よりも精度良く決めることが期待されています。我々は海底下1km程度の探査深度をもつコントロールソース電磁探査法および実際の海底探査システムの開発を進めています。

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人工および自然信号を用いた海底電磁探査の概念図


電磁探査を用いた海底資源探査

地下資源の探査・開発技術は、近年の国際的な資源獲得競争が激化に伴って、ますます必要となっています。既存の石油・天然ガス・鉱物資源の探査技術の向上はもちろんのこと、メタンハイドレートや海底熱水鉱床といった海底下の資源にも注目が集まっており、これらの探査方法の開発も重要です。我々では、海底電磁探査を用いてこれらの海底下資源を非破壊で調査する「物理探査」技術の開発を行っています。また実際に、メタンハイドレートや海底熱水鉱床が分布する海域において、海底で物理探査を行っています。
海底熱水鉱床の探査の様子
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電磁探査インバージョンコードの開発

活断層付近や海嶺下のマントルには地震波速度に異方性(方向による地震波速度の違い)があることが知られており、この観測値から活断層の固着度の議論やマントルの流動パターンの推定がなされつつあります。地殻やマントルの電気伝導度には同様の異方性はないのでしょうか?我々は、電気伝導度の異方性を含んだ海底MT法用インバージョン(逆解析)コードの開発を進めています。同手法を海嶺付近や海溝付近で過去に得られている電磁場データを利用して、電気伝導度異方性の検出を目指しています。

また異方性以外にも、地下3次元構造解析や、シャープな境界を含む地下構造解析、遺伝的アルゴリズムを用いた地下構造解析など、新たな地下構造解析コードの開発も進めています。

磁化構造のインバージョン例。左:最小自乗法、右:遺伝的アルゴリズム。


自然電位観測による地下水流動の検出

地面の下では地下水はどのように動いているのでしょう?それは自然環境や生物活動、はたまた活断層や地すべり地域にどのような影響をあたえているのでしょう?

岩石の隙間(空隙)を地下水が流れると、界面動電現象が発生し、上流側に負・下流側の正の電位(流動電位)が発生することが知られています。つまり自然の電位差分布を調べれば、地下水流動の情報を得ることができるのです(地下水の有無ではなく、地下水が動いているかどうかが分かる点が重要!)。我々は、海底の熱水地域や活断層地域において海底自然電位分布を測定し、自然電位異常から海底下の流体流動の様子やその時間変動を推定する手法を開発しています。

海底熱水域での自然電位異常観測の概念図


沈み込み帯のマントル構造解析

日本列島のような弓状の島々(島弧)や、日本海のような開いた海(背弧海盆)は、海洋プレートの沈み込みに伴うマントルの組成変化や流動パターンの変化によって形成されたと思われていますが、その詳細ははっきりとはしていません。

マントルの岩石の電気伝導度は温度と水(水素原子)の量に大きく依存しています。温度や水はマントルの柔らかさ(粘性)にも影響するため、マントルの電気伝導度構造が分かればマントルの組成や流動パターンの議論ができると思われます。我々は海底長期電磁気観測を実施し、沈み込む海洋マントルや島弧下のマントルウェッジ、背弧海盆下の上部マントルの電気伝導度構造の解明を行っています。

マリアナ海域に投入される海底電位差磁力計


海底長期電磁気観測所の構築

地震発生帯近傍の地殻内流体の挙動をモニターするために、海底ケーブルなどに磁力計などを接続することによって海底の複数地点で長期間の電磁場計測を可能とする技術開発を進めています。すでにデータ収集は開始されており、データ解析も行っています。

 また2003年よりスタートしたIODP(総合国際深海掘削計画)では、地震発生帯などで深部掘削を行った後のボアホールに地球物理的センサーを埋め込み、地球変動のモニタリングを実施する予定です。
初島沖海底ステーションで作業するROV「ハイパードルフィン」のマニピュレータ