航海開始の1週間ほど前に、バンクーバ島入りをして、調査の準備を手伝いました。向かったのはバンクーバ島のシドニーという町(オーストラリアではない)にある、カナダ地質調査所の太平洋地球物理学センター(PGC:Pacific
Geophysical Center)。ここはカナダの海底観測の拠点の一つで、様々な研究者がおられました。展示物もいっぱいあって、写真右は熱水チムニー(そののちに、この熱水チムニーと深く関わることになるとは、1997年当時はイチビットも思わなかった)。このPGCの一角で、トロント大のNigel
Edwards先生の指導のもと、装置の組立などを行いました。
日本調査隊(といっても3人しかいなかったが)の隊長は、藤浩明先生(当時、東京大学海洋研究所:写真下)。私の海底観測の師匠です。
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Nigel先生のもと、PGCの倉庫で毎日あーでもない、こーでもないと、悩みながら装置を組み立てましたっけ。あれ?カナダの装置じゃあなかったっけ(笑) 写真の装置は海底電位差計(OBE)。仮組みが終わった状態です。これからこの装置をPGCの岸壁から海水につけるところです。 |
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この装置は自己浮上式。海底までは自重で沈んでいきますが、タイマーが付いていて時間になると錘を切り離して浮く仕組みです。今回はさらに音響トランスポンダーなどを付けるので浮くかどうか、チェックしています。黄色いのは浮き(ガラス球)。今回特別に追加したものです(実はフレームの一部は木です!) |
準備も終わり、いざ出港です。調査船John P. Tully。元々はCoast Guardの船だったようですが、海洋調査船に改造されています。そのせいか、ラボ(船内の研究室)が狭い… デッキに出るのも出づらい。でも食堂はとてもデカイ。ラボよりもデカイのではなかろうか…
ちなみにフランス式の食事でした。メインが2種類、デザートが4種類から選べるというすばらしさ!
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写真右は、組み立てが終わり、バンクーバ島沖の海底へまさに投入されんとするOBE。結局、装置自体は日本人2人で組み立てましたっけ。カナダ人は計測ソフトの組み直しのため、PC(というかMac)とにらめっこしてました。途中、ソフト修正に時間がかかったため、Tully号自体やることがなくなって漂流してましたっけ。(油代節約です) |
上記のOBEには白いパイプがつきました。これのパイプの両端の電位差を測定します。これを2台投入しました(写真をよくみると左に腕だけ写ってる)。 一方、船からは海底付近で矩形電流を流します。この時の過渡応答をOBEで計測し、地球の電気的特性を測定します。時間領域で測定・解析するので厳密にはCSEMではなく、海底曳航式TDEM探査です(左図が概念図)。 現在、これを改良した探査法がカナダやドイツで実施されていて、ニュージーランド沖のメタンハイドレート調査などに活躍しています。 |
船の上ではそりゃあ、いろいろありました。 OBEを浮上させるのがタイマー切り離し方式はいいとして、2台を同時刻に浮上させるもんだから、当然1台見失ってしまうし。海面に浮いてるはずの装置を一晩探しましたっけ。 でも結局無事に見つかって、めでたし、めでたし。楽しい航海でした。Nigel先生を始め、賑やかなカナダ人の面々(ソフトと格闘する人、後ろに立たれると怒る人、トランプ好きなお嬢様、ロシア美人、ミスタービッグバー笑などなど)。乗ってる最中は「いいかんげんにしてくれ」と何度も思いましたけど。 写真右は、PGCの岸壁。夏のカナダらしい、穏やかな光景です。近くにはアザラシもいたよ。 |
こちらはバンクーバ島の街並み。至る所に花が咲いてあったり、飾ってあったりしました(その分、冬の寒さを想像…)。あと、夏とはいえ結構肌寒い。だけどカナダ人は半袖で平気でウロウロ。皮下脂肪が厚いのだろうか? | |
おなじくシドニーの港。本当にのどかで安全で、夜10時くらいに歩いていても、ぜんぜん怖さがなかったです。 「北米に来たけどアメリカは怖いし慌ただしい、オレはのんびり生きよう、そういう人が集まってカナダという国ができました」 そう言われたら信じます。 |