えびの群発地震


群発地震とは?

 ある地域で断続的に地震が頻発する地震活動は、群発地震と呼ばれている。普通の地震のように、本震・余震といった区別はない。火山地域などでよく見られるため、地下からの流体(マグマや地下水)の上昇と関係があるのではないかと言われているが、その発生原因は不明である。


跡津川断層を横切る地殻電気伝導度構造

 群発地震域と地下流体の関連性を探るため、1968年に発生したえびの群発地震の震源域において、広帯域Magnetotelluric(MT)調査が実施された。下図にえびの群発地震の震央域と4つのMT調査測線(AA', BB', CC', DD')を示した。MT調査は下図の黒丸の地点で実施された(数字は測点番号)。各測点で記録された電磁場変動から求められた2次元構造走行方向およびインダクションベクトルに基づいて、本地域の地下構造は東西走向の2次元構造であると考えて、2次元インバージョンを適用した。


MT探査の観測点分布(円)。灰色:えびの群発地震の震源域(Minakami et al., 1970) 。
点線::MT調査測線。三角:霧島火山のひとつである韓国岳、細い点線:、等高線。
灰色点線:加久藤カルデラのリム(Tajima and Aramaki, 1980).

 インバージョン法により、各測線下の2次元比抵抗構造を求めた。最適構造を比較したところ、群発地震の震源域はその周辺よりも高い比抵抗値を示すことがわかった。このことから、群発地震域には大量の水は存在していないと考えられる。


えびの群発地震域の3次元的な地下比抵抗構造イメージ。2次元地下比抵抗構造モデルを並べることにより、擬似的な3次元地下構造として示した。白点線:群発地震の震源域。

各測線AA'下の2次元比抵抗構造最適モデル。 比抵抗は対数表示。
矢印:MT観測点、白点線:群発地震の震源域、三角:韓国岳。

 群発地震域には地下流体(地下水)が分布していて、低比抵抗を示すものと期待していたが、群発地震域はむしろ比抵抗が高く、予想とは異なる結果が得られた。しかしながら、群発地震は本調査の30年近く前に発生しており、当時の地下水は散逸してしまっていることも考えられる。今回得られた地下構造からは、1) マグマから分化されて地下深部から上がってきた高圧の地下水が、2) 比抵抗が高く透水性の低い地層によって堰き止められた(トラップされた)結果、3) 間隙水圧が上昇し、群発地震が引き起こされたのではないか、と予想される。なお、この高比抵抗層は加久藤カルデラ中心部に位置しているため、カルデラ形成時に残されたマグマがこかしたものである可能性が考えられる。全測線において深さ1km付近に低比抵抗層が認められるが、掘削データより、これらは熱水変質した火山岩層と考えられる。

 今後は、群発地震発生直後に同様の電磁探査を実施すれば、群発地震と地下水および地下構造との関連性を解き明かすことができると考えられる。

※以上の成果についてはGoto et al. (1997)をご覧ください。
 詳細は業績リスト(査読有り論文)No.3を参照のこと。