-メタンハイドレート探査


メタンハイドレートとは?

 メタンハイドレート(MH)とは、水分子が水素結合によって作る篭の中にメタン分子が取り込まれた水和物であり,低温高圧下で安定な固体である。MHは極域の永久凍土や大陸縁辺域の堆積層中に認められている。MH層中には大量のメタンガスが閉じこめられているために,MHは新たなエネルギー資源として期待されている。一方では,メタンガスは温室効果ガスの一種であるため,MHの溶解が地球温暖化に与える影響も注目されている。

 

ピストンコアラー(上:写真2枚)と、これを用いた海底サンプル採取風景(下)


日本海海底で採取されたメタンハイドレート

 海底下のMH分布調査においては,反射法地震探査が用いられることが多い。大陸縁辺部の海底下には海底擬似反射面(BSR)と呼ばれる海底面に平行な地震波反射面がしばしば認められる。BSRはMH安定層とメタンガス層の境界と考えられており、MH分布の指標としてしばしば用いられてきた。しかし一般に,MH層の上面には明瞭な地震波反射面は認められず,反射法地震探査のみで実際の資源量評価を行うことは難しい。さらにBSRが認められない海域でも,相当量のMHの存在が示唆される場合もある。

人工電流信号を用いた海底下探査

 そこで我々は、海底電気探査を実施して、海底下のMHの検出を試みた。MHの電気の通りやすさは、通常の堆積物の数十分の一と低いことが知られている。このため、海底付近で電流を流して海底下の電気の通りにくさ(比抵抗構造)を求めることができれば、MH層のような堆積層中の高比抵抗層の発見に有効な手法となると考えられる。我々は、海底電気探査装置を独自に開発し、上越沖日本海海底において海底電気探査を実施した。


海底電気探査の概念図


実際の海底装置の写真(最新型:A-MANTA)

  調査の結果、海底電気探査によって海底下のMH層に相当すると思われる高比抵抗層分布(特に上面深度変化)がイメージ化することに成功した。得られた見掛比抵抗に基づいて、地下比抵抗構造を解析した。その結果、海底地形の高まり部分では海底直下~海底下100 mまでMHを多く含むと思われる堆積物が多く分布しており、特に水平位置600m地点付近ではMH濃集率が高いと思われる。また測線全体を通じて,海底下60~80 mより地下には海底面直下よりもMHを多く含む地層が広がっていた。


海底電気探査により明らかとなった海底下のMH分布予想図

 海底電気探査の結果を確認するために、この地域でピストンコアラーによる堆積物採取を行ったところ、海底直下にMH濃集域が認められる地域では、MHやその溶解物が採取された。さらにその周辺海底をカメラ曳航体で観察したところ、100 m程の幅で海底変色域が認められた。一方、海底直下にMH濃集域が認められない地域では通常の堆積物(泥)のみが採取され、海底変色域も認められなかった。以上のことから、海底電気探査によって、MHあるいは付随するメタンガスの海底下での分布をイメージ化できることが明らかとなった。

※以上の成果については後藤ほか(2009)をご覧ください。
 詳細は業績リスト(査読有り論文)No.27を参照のこと。