なつしまNT05-01航海について NT05-01航海では以下の3つの調査研究を行いました。 相模湾初島沖「深海底総合観測ステーション」への新たな観測装置の接続 新規開発を行った小型海底電位差計（OBE）・海底電位差磁力計（OBEM）の設置・回収試験 海底の微生物採取 ここでは主に、相模湾初島沖「深海底総合観測ステーション」への海底重力計・海底電位差磁力計・海底微圧計の接続について紹介します。

海底地殻変動や津波に伴う諸現象観測のための「海底観測所」の構築に成功 JAMSTECは海底の地殻変動や環境変動を長期間にわたり観測するため、北海道釧路・十勝沖や高知県室戸岬沖にケーブル式「海底地震総合観測システム」を設置しており、また相模湾初島沖にも「深海底総合観測ステーション」を設置し地震等のリアルタイム観測を行っています。 NT05-01航海では、京都大学・東海大学・東北大学と共同で海底微圧計など3種類の海底観測装置を新たに開発し、これらを相模湾初島沖の「深海底総合観測ステーション」へ水中接続し、世界にも類を見ない海底地殻変動や津波に伴う諸現象を観測する海底観測所の構築に成功しました。長期間のリアルタイム試験観測は平成17年2月より開始されており、観測を継続中です（同年9月現在）。今回の海底実験によって培われた海洋技術および海底観測データを、リアルタイムでの防災システム構築に役立てていく予定です。

初島周辺の地震活動（気象庁より）   拡大図はこちら 深海底総合観測ステーションは群発地震活動が盛んな地域に位置しています。また伊豆大島・三宅島から伊豆半島へと続く火山帯の直近にもあたります。1997年には、群発地震時の海底地滑りに伴う泥流の様子を観測しました。

海底地殻変動や津波に伴う諸現象観測のための海底観測所構築の構築 地震・津波の発生には地殻変動や地殻内流体の関与していることが知られています。地震・津波に伴う海底水圧の微弱な変動を観測すると同時に、地殻変動や地殻内流体変動に敏感な海底の重力変動・電磁場変動を長期に渡って連続観測することは、地震・津波等の原因となる地球内部変動現象解明に有効な手段です。従来、このような観測は電源や記録装置を内蔵した自己浮上式の観測機器を海底に設置して行っていましたが、 データが得られるのは観測機器の回収後 電池の性能の限界等のため連続観測期間は一年程度 連続した観測データを得るには観測船で現地海域に毎年行き、新たな観測機器への交換作業が必要 複数の自己浮上式装置を同一地点に設置することは困難 といった問題点がありました。しかし、電力伝送と通信機能を併せ持つ海底ケーブルに観測機器を接続すれば、同一の地点で数年以上の長期に渡って連続的な観測を行うことができるとともに、データをリアルタイムで得ることが可能となり、急激な海底の変動を即座に知ることができるようになります。 海底重力観測・海底電磁気観測などによる海底地殻変動モニタリングの概念図 海洋科学技術センター（現独立行政法人海洋研究開発機構）は、1993年に地殻変動活動の盛んな相模湾初島沖水深約1,200mの海底に深海底総合観測ステーションを設置し、地震・水温・水圧・流向流速を調査するとともに、テレビカメラによる深海生物の調査を行ってきました。2000年に更新された新ステーションはこれらの観測機器に加えて、水中で着脱可能な拡張用接続コネクターが新たに設けられており、新しい観測機器を追加接続し、より多目的な観測が行えるようになっています。今航海ではこの水中着脱コネクターを利用して、3つもの新しい観測装置を深海底総合観測ステーションに接続しようというわけです（上図）。

海底観測装置の海底への設置作業 下写真：初島ステーションに新たに接続された観測装置（海底重力計・海底電位差磁力計） をハイパードルフィンにて撮影。他にLinuxBOX＋圧力計もあり（初島ステーションの後方、この写真には写っていない）。 拡大写真はこちら（500KBあります。大きいです） あまり写りがよいとはいえませんが、これは画期的な写真なのです。深海底には太陽の光が届かず、ライトだけが頼りですので、一度に見渡せる距離は5-10m程度です。そのような狭い範囲にこれだけ多数の海底観測装置を並べて、海底ケーブルによりリアルタイム海底観測データを取得できるシステム（海底観測所）を構築した例は世界で他にはなく、日本の海底観測技術の高さを示しているのです。 以下、各観測装置などの詳細を説明いたします。写真をクリックしてみてください。

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JAMSTEC岸壁を出港