-人工電磁探査
自然信号を用いた海底電磁探査法
海底資源の分布規模などを調査する際には、陸上の資源開発と同様に物理探査(=物理的現象を測定・分析して地下の状況を探査する技術)および試掘を実施する。この物理探査のうち、近年は特に電磁波を用いた物理探査に注目が集まっている。
人工および自然信号を用いた海底電磁探査の概念図
海底で電磁場を測定して、海底下の比抵抗情報や比抵抗構造(断面図)を得る電磁探査を「海底電磁探査」と呼ぶが、大別すると自然の電磁気信号を用いる場合と、人工的に発生させた電磁気信号を用いる場合がある。前者の代表例は海洋MT(Magnetotelluric)探査であり、複数の海底電位差磁力計(Ocean Bottom Electromagnetometer: OBEM)によって海底での自然の電磁場変動を測定し、地下情報を得る電磁探査の一つである(上図)。自然の地磁気変動が海底に作り出す誘導電場の大きさは、その変動周波数と地下の比抵抗に依存する。また低周波数の電磁場変動ほど地下深くまで浸透する。従って様々な測定周波数で電磁場変動を測定すれば、海底下浅部~深部の比抵抗構造の情報を得ることができる。海洋MT探査はすでに油ガス調査に適用されており、例えばKey et al.(2006)では、メキシコ湾において海洋MT探査を実施し、石油貯留層生成に関与する岩塩を海底下1~5kmに分布する高比抵抗体としてイメージしている。
ただし海洋MT探査の場合は、海底直下の地下比抵抗構造の情報を得ることは難しい。海洋MT探査で利用する自然の電磁場変動は電離層起源であるため、高周波の電磁場変動は海水中で減衰してしまい、海底まで届かない。一方、低周波の電磁場変動は海底まで届くが海底直下で急速に減衰しないために、海底下深く(数km)までの平均的な比抵抗情報が得られることとなる(上図)。従って海底下数kmよりも浅部を探査するためには、海底付近に比較的高周波の人工電磁場信号源を設置し、人工電磁探査を行う必要が生じる。
人工信号を用いた海底電磁探査法
ここでは人工電流源を用いた海底電磁探査のうち、代表的なものを紹介する。人工信号を用いた海底電磁探査は現在各国で開発中であり、これ以外の方法も次々に編み出されている(研究者が10人いれば10通りの探査法が存在する、百花乱舞状態と言える)。しかし大別すれば、
A) 送信装置と受信装置が切り離されている方法と、B) 送信装置・受信装置ともに一体化されており共に海底付近を曳航される方法に分けられる。前者は一般に探査深度が深く(1km~数km)、後者は浅い(~1km)という特徴がある。Aの代表例として海洋CSEM探査やMMR探査、Bの代表例として曳航式(Towed)CSEM探査および海底電気探査(MDCR)が挙げられる(下図)。
様々な人工電流源海底電磁探査
当研究室ではこのうち特に、海洋CSEM探査と海底電気探査に着目し、数値計算や室内実験に基づくFeasibility studyや解析・解釈技術の開発を行っている。また実際に機器を開発し、実海域での探査を試みている。
※以上の成果については後藤ほか(2009)をご覧ください。
詳細は業績リスト(査読有り論文)No.27を参照のこと。
では実際に人工電磁探査・電気探査の例を見てみよう。
- 日本海メタンハイドレート探査
- 伊豆小笠原および沖縄沖における海底熱水鉱床探査