ベレ出版「地底の科学」特集サイト

補足資料(その3)
注:” ”は引用部分。また注釈のない図は本書中に掲載されたもの(カラー版)。

10,000mの地下-せまりくる巨大災害

  新燃岳の噴火(2011年:写真)


左:撮影:東京大学小山崇夫氏。右:夜間の火口付近の様子(撮影:柚木耕二氏)。
※拡大版は物理探査ニュース No.12 (2012)を御覧ください

  260万年前より新しい火山は450以上

火山の数は現在456だそうです。
● 「日本の火山(第3版)」を刊行(産業技術総合研究所)
 http://www.aist.go.jp/aist_j/new_research/nr20130619/nr20130619.html
 ”日本の第四紀火山の火山数は「日本の火山(第2版)」(1981年刊行)の302から
  今回の第3版の456へと大幅に増えた。”
このうち活火山は110、気象庁などが監視・観測を行なっている火山は47です(2013年現在)。
● 活火山とは(気象庁)
 http://www.seisvol.kishou.go.jp/tokyo/STOCK/kaisetsu/katsukazan_toha/katsukazan_toha.html
ちなみに上記ページにあるとおり、現在は「休火山」「死火山」という言葉は使われていません。

  数ある火山のなかでも最近話題なのは富士山

● 富士山の地下構造とマグマ(藤井敏嗣, 日本火山学会第11回公開講座, 2004)
 http://www.kazan-g.sakura.ne.jp/J/koukai/04/2.html
 ”富士山の地下構造はかなり詳しく分かってきましたが,まだ地下にあるマグマ溜まりの正確な場所や大きさを
 知ることはできません。これは富士山だけに限ったことではありません。”
● コラム:大地震は火山噴火を誘発する!?(NHK そなえる防災)
 http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20120622.html
 ”火山研究者の多くは「もしかするとこのまま富士山噴火につながるのでは・・・」と考えたのです。”
● 大規模火山災害対策への提言(広域的な火山防災対策に係る検討会, 平成25年5月16日, 内閣府)
 http://www.bousai.go.jp/kazan/kouikibousai/pdf/20130516_teigen_sanko.pdf
 ※「提言の対象とする大規模噴火」を見ると、富士山の噴火(1707年)の規模は大きいけれど、
  富士山以外でそれよりももっと巨大な噴火がたくさん起きていたことが分かります。
●富士山噴火と巨大地震(鎌田浩毅, 岩波科学「科学通信」2007年6月号)
 http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/Iw.FujisanKyodaijishin.2007.6.htm
●日本経済新聞 春秋(2010/4/19 朝刊)
 http://www.gaia.h.kyoto-u.ac.jp/~kamata/2010.4.19Nikkei.Shunju.html
 ”パソコンや精密機器が故障し、銀行ATMや地下鉄は動かず、ビルの照明や信号機も消えるかもしれない。”
● 「富士山は100%噴火する」(鎌田浩毅, サンデー毎日2012/03/04号)
 ”富士山では噴火のおよそ1ヶ月前にこうした現象が起き始めるので、事前に必ず分かります。”


富士山の下の断面図(下記に加筆)
● Aizawa, K.,R. Yoshimura and N. Oshiman, Splitting of the Philippine Sea Plate and a magma chamber
 beneath Mt. Fuji, Geophysical Research Letters, 31, L09603, doi:10.1029/2004GL019477, 2004.


セント・ヘレンズ山とアダムズ山を横切る地下比抵抗断面図(下記に加筆)
Hill, G.J.,T. G. Caldwell, W. Heise, D. G. Chertkoff, H. M. Bibby, M. K. Burgess, J. P. Cull and R. A. F. Cas,
Distribution of melt beneath Mount St Helens and Mount Adams inferred from magnetotelluric data,
Nature Geoscience 2, 785-789, 2009.

  有珠山大噴火の2日前に警報(臨時火山情報)

火山噴火の直前予知の成功例ですが「噴火の前兆を捉えられたので成功した」という単純な結果ではなく、
噴火前からの地道な取り組みが実を結んだといえそうです。
● ぎりぎりのセーフ:2000年有珠山噴火と減少災害の科学(岡田 弘, 北大広報誌)
 http://www.hokudai.ac.jp/bureau/populi/edition12/saigai01.htm
● 2000 年有珠山噴火と火山防災教育
 http://www.bousai.go.jp/kazan/expert/forum/2011/pdf/20120214_forum_tanabe.pdf
● 2000 年有珠山噴火における火山情報と地元対応
 http://www.dpri.kyoto-u.ac.jp/~kazan/coe_ws/02.pdf
● 3次元速度構造に対して決定された2000年噴火前兆地震の震源分布(Onizawa et al., 2007)
 https://gbank.gsj.jp/volcano-AV/vr/usu/pic/065.html

  噴火の1 年ほど前から霧島山周辺の地殻の伸びが観測

本書中では「1 年間でおよそ30cm 広がった」と記しましたが、「1 年間でおよそ3cm 広がった」の誤りでした。
お詫びするとともに、訂正させて頂きます。
● 霧島山(新燃岳) GPS 解析 (気象研究所・気象庁, 第 119 回火山噴火予知連絡会 )
 http://www.mri-jma.go.jp/Dep/sv/3ken/shinmoe2011/20110322_no119/20110322_GPS.pdf
● 霧島山(新燃岳)の火山活動に関する火山噴火予知連絡会拡大幹事会見解
 http://www.jma.go.jp/jma/press/1102/03a/yochiren110203.html

  火山噴火予知の現状と課題

● コラム:今後の火山活動と噴火予知(NHK そなえる防災)
 http://www.nhk.or.jp/sonae/column/20130114.html
 ※ 火山噴火予知の成功・失敗例が紹介されています。
● 噴火を予測せよ! ~火山研究最前線~ (サイエンスZERO)
 http://www.nhk.or.jp/zero/contents/dsp337.html
 ※上記のうち、素粒子・ミューオンを使った火山内部の探査装置については下記に詳しい。
 Tanaka, H. K. M., Uchida, T., Tanaka, M., Shinohara, H., and Taira, H., Development of a portable
 assembly-type cosmic-ray muon module for measuring the density structure of a column of magma,
 Earth, Planets and Space, 62, 119-129, 2010.
● 新燃岳噴火と予知研究の課題(NHK解説委員室ブログ)
 http://www.nhk.or.jp/kaisetsu-blog/200/74245.html
● 第7次火山噴火予知計画の推進について(建議)の概要(文部科学省、2003年)
 http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/gijyutu/gijyutu0/toushin/03072402/003.htm
 ”噴火開始後の火山活動の推移予測については,依然として解決すべき問題が残されている”
 本書でも取り上げましたが、三宅島の噴火の際には二酸化硫黄が長期に渡り発生しました。
 この二酸化硫黄は海を越えてはるか横浜市まで届いていました。
 ※三宅島の噴煙による二酸化硫黄にご注意を!!(横浜市環境創造局)
 http://www.city.yokohama.lg.jp/kankyo/mamoru/kanshi/so2info/miyainfo.html
● マグマ溜まりが物理探査で検出できるか?(火山学者に聞いてみよう:日本火山学会)
 http://kazan-g.sakura.ne.jp/J/QA/topic/topic72.html

  1995 年の兵庫県南部地震の翌年から2013 年4 月までの被害地震の一覧

● 日本付近で発生した主な被害地震(平成8年以降)(気象庁)
 http://www.seisvol.kishou.go.jp/eq/higai/higai1996-new.html
なお、改めて数え直したところ、1996年~2013年4月までの被害地震の数は125回、うちマグニチュード7以上の地震は17回でした(本書には126回、20回と書いておりました。お詫びするとともに、訂正させて頂きます)。
被害地震は平均して約7回/年、マグニチュード7以上の地震は毎年1回位発生しています。

  予知に成功した地震

● 2008年1月11日 岩手県釜石沖の地震(M4.7)(東北大学)
 http://www.aob.gp.tohoku.ac.jp/info/topics/topics-080111/
 ”Matsuzawa et al.(2002) が2009年2月までに発生すると予測していた期間内に発生しました。”
● 地震予知は成功している(8) (ブログ 海の研究者)
 http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2008-06-18-1

  断層の種類



下記のパンフレットに「断層のタイプ」「震源断層と地震断層」として分かりやすくまとめられています。
● 日本の地震防災 活断層(文科省)
 http://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/katsudanso/

  断層の長さ:M7で30~40km 程、M8以上で100km以上

● マグニチュード別に見た地震のイメージ(防災科技研)
 http://www.hinet.bosai.go.jp/about_earthquake/sec2.2.html
ちなみに上記サイトによれば、”Mが1だけ大きい地震は断層長が3倍で発生頻度は約1/10, またMが2大きい地震は断層長が10倍で発生頻度は約1/100” です。また地下10kmでの温度はおよそ300度です(下記)。
● 地熱資源の性質(地熱学会)
 http://grsj.gr.jp/whatbook/chapter2.html

  電磁探査(MT 探査)によって明らかとなった活断層の姿

● 庄内平野東縁断層

下記論文の図に加筆。
Hiroshi Ichihara, Makoto Uyeshima, Shinya Sakanaka, Tsutomu Ogawa, Masaaki Mishina, Yasuo Ogawa, Tadashi Nishitani, Yusuke Yamaya, Atsushi Watanabe, Yuichi Morita, Ryokei Yoshimura, Yoshiya Usui, A fault-zone conductor beneath a compressional inversion zone, northeastern Honshu, Japan, Geophysical Research Letter, 38, 9, 38-41, doi:361 10.1029/2011GL047382, 2011.

● サンアンドレアス断層(パークフィールド地域)

下記Web siteの図に加筆。
http://es3.earthscope.org/observatories/safod
原論文は下記。
Martyn Unsworth and Paul A. Bedrosian, Electrical resistivity structure at the SAFOD site from magnetotelluric exploration, Geophysical Research Letter, 31, L12S05, doi:10.1029/2003GL019405, 2004.
下記も参照。
http://www.nature.com/nature/journal/v472/n7341/full/nature09927.html

●跡津川断層

下記論文の図に加筆。
R. Yoshimura, N. Oshiman, M. Uyeshima, H. Toh, T. Uto, H. Kanezaki, Y. Mochido, K. Aizawa, Y. Ogawa, T. Nishitani, S. Sakanaka, M. Mishina, H. Satoh, T. Goto, T. Kasaya, S. Yamaguchi, H. Murakami, T. Mogi, Y. Yamaya, M. Harada, I. Shiozaki, Y. Honkura, S. Koyama, S. Nakao, Y. Wada, Y. Fujita, Magnetotelluric transect across the Niigata-Kobe Tectonic Zone, central Japan: A clear correlation between strain accumulation and resistivity structure, Geophysical Research Letters, 36, L20311, doi:10.1029/2009GL040016, 2009.

●紀伊半島沖(南海トラフ)

下記論文の図に加筆。
木村俊則・後藤忠徳 ・笠谷貴史・岡本拓・三ケ田均・真田佳典・渡辺俊樹・芦田讓, 構造境界面を組込んだMT法の2次元インバージョン, 物理探査, 63, 185-196, 2010.

  「ゆっくりすべり域」と「アスペリティ」、「余効変動」


下記などを参照下さい。
● コラム「東北地方の地震の発生メカニズム」(仙台放送)※2011年より前の記事のようです。
 第9回/プレート境界型地震とアスペリティモデル
 http://jishin-info.jp/column-10/column-10i.shtml
 第10回/アスペリティモデルと宮城県沖地震
 http://jishin-info.jp/column-10/column-10j.shtml
● アスペリティとバリアー(東京大学地震研究所 瀬野教授)
 http://www.eri.u-tokyo.ac.jp/seno/terms/asperity.barrier.html
● 平成25年5月の地殻変動について(国土地理院) ※余効変動
 http://www.gsi.go.jp/WNEW/PRESS-RELEASE/2013-goudou0610.html
● 地震を支配する法則の探究(第13回東京大学理学部公開講演会)
 http://www.s.u-tokyo.ac.jp/ja/event/public-lecture13/pdf/ide.pdf
● 断層掘削研究によって明らかになった地震時の断層滑り挙動とその物理化学的側面
 (廣野ほか, 地学雑誌, 2013)
 https://www.jstage.jst.go.jp/article/jgeography/122/2/122_122.323/_pdf
● ブログ「海の研究者」より
 - 想定外の巨大地震だったのか?  ※アスペリティ仮説などの説明
  http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2011-03-22
 - 今回の地震の科学的な謎  ※アスペリティ仮説は敗北したのか?
  http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2011-03-28
 - 次の大地震はどこか?~余効変動~ 
  http://goto33.blog.so-net.ne.jp/2011-05-16

ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー  ー

100,000mの地下-日本列島の地下深部

  プレートテクトニクスとは?


大陸プレート・海洋プレートの模式図。

下記などを参照下さい。また書籍として「グローバルテクトニクス」(杉村新, 東大出版, 1987)や、
「図解・プレートテクトニクス入門」 (木村学, 講談社ブルーバックス, 2013)などをお薦めします。
● プレートテクトニクス(測地学会)
 http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-3/2-3-1.html
● プレートテクトニクス概観(測地学会)
 http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-3/2-3-1-1.html
● プレートテクトニクスの検証(測地学会)
 http://www.geod.jpn.org/web-text/part2/2-3/2-3-1-2.html

  誰が沈み込むプレートを見たか?

肉眼で見ることは困難です。地震波などを用いて地下探査を行うことで、その存在を確認できます。

上:岩手県沖合での反射法地震探査の結果(地下断面図)。海洋研究開発機構による。
下:地震探査の結果の解釈図。


東北地方の地下構造。下記サイトの図へ一部改変。
● マントル深部への水の輸送を示す地震学的証拠(東京大学地震研究所 川勝教授)
 http://gachon.eri.u-tokyo.ac.jp/~hitosi/misc/slab_press.html
● プレートテクトニクスの謎 -プレートの底- の深海底観測による解明(同上)
 http://gachon.eri.u-tokyo.ac.jp/~hitosi/misc/LAB.html
● 「プレートの底」の話(同上)
 http://gachon.eri.u-tokyo.ac.jp/~hitosi/misc/Soko.html

  地震波トモグラフィーによって得られた日本列島の地下深部構造(地震波速度構造)

下記の図を改変。
● Dapeng Zhao, T. Yanada, A. Hasegawa, N. Umino and Wei Wei, Imaging the subducting slabs and
 mantle upwelling under the Japan Islands, 190, 816-828, doi: 10.1111/j.1365-246X.2012.05550.x, 2012.

左が白黒版、右がカラー版。
ご注意:本書中では「白いところほど地震波の速度が遅く、黒いところほど速い」と記していますが、
正しくは「白いところほど地震波の速度が速く、黒いところほど遅い」の誤りでした。
お詫びするとともに、訂正させて頂きます。

  「地殻」と「プレート」を同じものではない

● 「地殻」=「プレート」として構わないものなのですか?(火山学者に聞いてみよう、日本火山学会)
 http://kazan-g.sakura.ne.jp/J/QA/topic/topic4.html
● 地圏-層構造(名古屋市科学館)
 http://www.ncsm.city.nagoya.jp/visit/exhibition_guide/keyword.html
 ※キーワード検索 > 「ま」ではじまるキーワード > キーワード【マントル】
なお世界各地の地殻の厚さなどは下記にまとめられています。
● Lithosphere Thickness Variations(ハワイ大学)
 http://www.soest.hawaii.edu/GG/FACULTY/conrad/liththick/liththick.html
● A Global Crustal Model(米国地質調査所)
 http://earthquake.usgs.gov/research/structure/crust/crust.php
● Marine Geology & Geophysics:Images of Crustal Age of the Ocean Floor(米国海洋大気庁)
 http://www.ngdc.noaa.gov/mgg/image/crustalimages.html

  マントルがマグマになる条件

1) かんらん岩の圧力はそのままで、温度を上げる。
2) 温度はそのままで圧力を下げる。
3) 高温・高圧状態のかんらん岩に水を加える。
上記のいずれかの条件を満たすと、マントル(かんらん岩)が溶けてマグマ(部分溶融、メルト)が生成されます。

 徹底図解 地球のしくみ(新星出版社)より引用。

  海底観測装置の仕組み

海底で電場や磁場を測定する装置「海底電位差磁力計(OBEM)」を一例として挙げました。

 投入時の様子。


海底に降りたときの様子(水深約5000m)。海底にいる生き物はセンジュナマコの一家。提供:海洋研究開発機構。


OBEM の設置・回収作業の概念図。

  沈み込むプレートがマントル深部へ「ダイブ」


マリアナ諸島周辺の地図(左)およびマリアナ諸島を横切る調査ラインの地下の断面図(右)。下記論文を改変。
Tetsuo Matsuno, Nobukazu Seama, Rob Evans, Alan D. Chave, Kiyoshi Baba, Anthony White, Tada-nori Goto, Graham S. Heinson, Goran I. Boren, Asami Yoneda, Hisashi Utada, Upper mantle electrical resistivity structure beneath the central Mariana subduction system, Geochemistry, Geophysics, Geosystems, 11, Q09003, doi:10.1029/2010GC003101, 2010.

  海洋プレートの移動の原動力は未解明

● 地震がわかる!Q&A(地震調査研究推進本部)
 http://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/wakaru_qa/index.htm
 http://www.jishin.go.jp/main/pamphlet/wakaru_shiryo/wakaru_shiryo4.pdf
 ”プレート運動の原動力として、マントル対流による運搬などが考えられていますが、
 現在のところはっきりとしたことはよくわかっていません。”
● プレートはなぜ動くのか?~プレート運動の原動力に関する新しい発見~ (JAMSTEC)
 https://www.jamstec.go.jp/j/about/press_release/20140331/
 ”海洋プレート生成時において、マントルの流動によりプレート運動が駆動されていた”